今月は9月27日から公開された「任侠学園」を観てきました。
私は本作品の原作者今野敏さんのファンなのですが、元々熱血とか学園物の作品が苦手でこの「任侠学園」の小説は読んだことがありませんでした。
そんな触れたことのない世界観と、大好きな原作者が掛け合わさるとどんな作品になるのか、ドキドキしながら観てきました。
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「任侠学園」の予告
予告からコメディ感満載の「任侠学園」。
西田敏行さんを始め、本家?ヤクザ映画「アウトレイジ」の俳優も何名か出演されています。
「全員善人」のキャッチコピーは正しいのか?
本作品のキャッチコピー、ヤクザなのに「全員善人」はアウトレイジの「全員悪人」からのパロディ表現なのでしょうか。
全体的なストーリーからすると、「善人」というよりはただの「見た目だけが怖い人」と感じたのが正直な感想です。
西島さん演じる日村さんも「顔が怖い」と部下に言われていただけで、ヤクザらしい怖さとはまた違う感じがしました。
暴力シーンも正当防衛のような状態でしたし…。
圧倒的に非現実感が強く、登場人物に感情移入することが難しい作品でした。
また原作者今野敏さんはこのように任侠シリーズについて語っています。
本作を手掛けたのは、2017年「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞するなど、警察小説で定評のある今野敏先生。ヤクザを主役に挑んだ異色作「任俠」シリーズはファンも定着し早くもシリーズ5作目が手掛けられている。
そんな今野先生だが、実は反社会勢力が大嫌いで「なんでこんな人たちがいるのか?」と若い頃から思っていた。しかし「一方的な目線ではなく、そちら側に立って考えたらどうか?」と思ったことをきっかけに任俠シリーズは始まっていくー。
「正義を通す警察にだって腐敗した一面があるように、冷ややかな任俠の世界にも情熱を持った人がきっといるはず…いや、いて欲しいという想いから始まった、いわばファンタジーですね。」と、今野先生は語る。こんなヤクザいるわけない!!
そんな“阿岐本組”が生きる任俠道は必見だ。引用:公式サイト
確かに本作品は「ファンタジー」という表現がぴったりです。
学校の再建に関してもあまりにも現実離れしていましたし、どの登場人物をみても「こんな人いないでしょ」って突っ込みたくなるようなシーンばかりでした。
更生するのが早すぎる「不良娘」
学校一の問題児を演じる葵わかなさんもちょっと不良娘の演技に無理があった気がしました…。
キリッとした表情をされているのは感じましたが、どうしても雰囲気と言葉遣いがあっていないような気がして…。(今流れている引っ越しのCMで爽やかでかわいい雰囲気だからかもしれません)
というか役者さんの演技よりも、今どき大人に向かって「おい!」とか「おっさん!」とか言う不良っているのかななんて思ったりしました。
そして、花を植えたお礼を言われただけで、突然素直になる不良娘。
それだけ人との関係に飢えていたという設定なのかもしれませんが、なんだかあまりにも薄っぺらい不良娘だと思ってしまいました。
今野敏さんの警察小説にでてくる学生は社会や家族にに恨みを持ちながら、大人に対して静かに反感を持っているイメージがあったので尚更。
ガラスを割っていた不良男子学生たちは「ググっていいですか??」と言っていたので、おそらく舞台は現代だと思います。
なので余計に「あんな古風な不良いる?」と思ってしまうのでした。
学生たちの更生ストーリーについて
学生が問題を起こし、それを解決する阿岐本組。
最終的に学生はヤクザとお友達になります。
ですが、あまりにも学生の更生ストーリーが薄くて少し残念でした。
元野球部員の男子生徒が、友達と一緒になって窓ガラスを割り、バレたのちに怪我をして入院することになるシーンがあります。
そんな入院中に、日村さんが書いた手紙を見て、野球を楽しんでいたころの自分を思い出し、次のシーンではもう更生された元野球部員がでてきます。
一言でいえば「もっと一人一人を深堀りするかと思えば何もなかった」という気持ちです。
半カタギの娘も、仲の良かった元野球部員の男子学生の復讐をするかと思えばヤクザ任せ…。
結局自分の手は何も汚さずに、不良娘と最後は仲直り。
ジャンルは違いますが、そう考えるとソロモンの偽証は優等生から不良生徒まですべてのキャラクターに味があったなと思います。
ヤクザ側のキャラクターはすごく良かった!
と、学生のがっかりな感想を述べてはいますがヤクザ側のキャラクターはすごく良かったです。
西田さん始め、子ボケを挟みつつも人間味のある性格を感じることができ、キャラクターひとりひとりに愛情を持つことができました。
学生のキャラクターが物足りなかっただけに、もっと阿岐本組のシーンを見ていたかったです。笑
「任侠学園」を一言で表すと
本作品「任侠学園」を一言で表すと「単純」です。
キャラクターとストーリーに重みがなかったのは、本作品がコメディだから。
リアリティがなく、迫力がなかったのは、本作品がファンタジーだから。
そう思うことが映画「任侠学園」の正しい評価な気もします。
キャストは豪華だし、ヤクザ側のコメディチックな演技力は見ていて楽しかったです。
途中、無理して演技しているような西島さんの表情を見ることもありましたが、それはそれでコメディ作品の味なのかな?と感じたり。
ただ先日見た「記憶にございません!」が同じコメディ、ファンタジー映画として出来上がり過ぎていたので、つい比べてしまったようなところもありました。
そして子供と一緒に家族で見るなら、こういう作品を観たいなぁとも思います。(ソロモンの偽証は子どもには重すぎるので)
ただ、映画じゃなくてドラマで観たかったです。
このくらい気楽に見れるストーリーで、キャストが豪華だと毎週のドラマとしてはすごく楽しめた気がします。
あとはエンドロールのNGシーンがよかったのと、西田敏行さんの歌う「また逢う日まで」でホロっと来そうになりました。
今野敏さんの警察小説を読みすぎてしまったのか、先入観たっぷりで映画を観に行ってしまったのでこんな感想になってしまいました。笑
でも逆にいうと、あんなに固い警察小説から、こんなにラフなコメディストーリーまで書ける小説家ってすごいです。
映画のラストは続編がありそうな感じで終わりましたが、次のストーリーは小説で読みたいなと思った作品でした。
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